2015年3月4日水曜日

小杉泰「イスラームとは何か? その宗教・社会・文化」

小杉泰「イスラームとは何か? その宗教・社会・文化」
<http://www.amazon.co.jp/dp/4061492101/>
新書: 302ページ
出版社: 講談社 (1994/7/20)
言語: 日本語
ISBN-10: 4061492101
ISBN-13: 978-4061492103
発売日: 1994/7/20

[書評] ★★★★☆

イスラーム(イスラム教)の歴史とその教えについて概説した本。

イスラームは世界十数億人の文明である。欧米社会のような政教分離されていないので前近代的な宗教だと言われることがあるが、そもそもイスラームを(西欧社会で言う)「宗教」と捉えることに無理があることがよくわかる。本書を読むと、イスラームが、同胞を助けたりして社会生活を営んでいく上で大切な「教え」と、社会システムを規定した「法」との両方とから出来ていることがよくわかる。

入門書でありながら、情報量は豊富。イスラームの歴史と指導者の系譜を述べるのに紙面を割きすぎな感じもあるが、これを踏まえて最終章(9章)「現代世界とイスラーム」に入ると、中東・東欧・中央アジアで起こった/起こっている諸問題が非常によく理解できる。1994年発行のため、新しい問題(9.11ほか)については述べられていないが、旧ユーゴスラビア分裂やコソボ独立運動、パレスチナをめぐる対立など、西欧列強の植民地から独立した後に発生した諸問題についての理解が深まる。

日本人としては、つい遠い世界と考えてしまいがちだが、世界の潮流の重要なパートを占めるイスラームに対する理解が深まる良書

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